妊娠中によく見られる皮膚の異変は? ホルモンの変化により、乳首および性器周りの皮膚の色が濃くなります。腹部には、正中線と呼ばれる線が出現することがあります。 胎児の成長につれて腹部が大きくなるため、妊娠線と呼ばれる紫からピンクがかった筋が腹部皮膚に見られることがあります。 妊婦によっては、顔面に色素沈着(シミ)が起こるケースもあります。 これらの症状は消えるの? 出産後も、皮膚に起きた変化はしばらく続きますが、時間の経過と共に消えていく傾向があります。 色素沈着に関しては、漂白クリームで症状を和らげることができます。 妊娠線に関しては、色は薄くなりますが、完全に消えることはあまりありません。市販の妊娠線予防クリームは、あまり効果がありません。 妊娠中に起こるこれらの変化は、胎児に対して悪影響を及ぼすものではありませんが、風疹(三日ばしか)、梅毒、外陰部単純ヘルペスは胎児に有害な影響を及ぼします。 a) 風疹(三日ばしか) 咳やくしゃみに含まれる風疹ウイルスによって感染します。 感染後、身体全体に紅斑が出現し、2~3日続きます。痒みはありません。 妊娠20週間以内に風疹を発症すると、胎児に出生異常(奇形も含む)が起こる可能性があり、場合によっては子宮で死亡することもあります。 女性は幼少時に風疹ワクチンを受けている必要があり、妊娠中の風疹ワクチン接種は行ってはなりません。 b) 梅毒 梅毒は性感染症の一種です。 初期状態では、性器に潰瘍(痛み無し)が出現し、治療をせずとも3週間以内に自然に消えます。6~8週間後には、手のひら、足の裏、口に紅斑が現れます。 妊娠中に梅毒を発症すると、胎児の心臓、骨、脳になんらかの異常が現れる場合があります。 先進国では、妊娠中の定期的な検診で梅毒の有無を確認しています。 c) 外陰部単純ヘルペス(性器ヘルペス) 外陰部単純ヘルペスは、単純ヘルペスウイルスに感染することによって発症します。 性的接触が感染の主な原因です。 再発性のある疾患です。 症状としては、外陰部(性器)に痛みを伴う水泡が出現します。ウイルスが存在するにも関わらず、症状が現れないこともあります。 出産時にウイルスに接触することで、新生児の皮膚、脳、肝臓が単純ヘルペスウイルスに感染することがあります。妊婦の状態(特に出産時の)を管理しておくことで、新生児の感染を防ぐことができます。帝王切開が必要な場合もあります。 妊娠中に発症しやすい皮膚病は? 以下の皮膚病は妊娠中に見られる皮膚疾患であり、出産後治癒する傾向があるものです。 A) 多形妊娠疹(PEP) 妊婦300人に一人の割合で発症するといわれています。 症状としては、腹部の筋から始まり、徐々に強い痒みを伴う紅班が全身に拡大していきます。 子宮内の胎児に悪影響はなく、出産後6週間以内に消えます。 まれに、出産後に発症するケースもありますが、6週間後には消えます。 B) 妊娠性疱疹 滅多に発症することはありません。 症状としては、へその部分から小さな水疱が出現します。 たまに早産となることがありますが、子宮内の胎児に悪影響をおよぼすことはありません。 妊娠するたびに再発する傾向があります。 妊娠性疱疹 C) 多形紅斑 紅班が胴体および腕に出現します。 痒みはなく、出産前に消えることもあり、出産後はほとんどのケースにおいて消えます。 多形紅班の原因は複数(感染症、薬物反応など)考えられるため、医師は各原因を区別する必要があります。 多形紅班 妊娠中および妊娠後の脱毛 出産後、大量の髪の毛が抜け落ちることがあります。 休止期脱毛と呼ばれるこの症状は、治療せずとも出産後3~6ヶ月で快復します。 妊娠中に皮膚に異常が見られた場合に注意しなければいけないことは? 妊娠中の皮膚病の多くは、通常の場合と同じように治療を受けることが可能です。…