アトピー性皮膚炎
1. アトピー性皮膚炎とは?
- アトピー性皮膚炎は、皮膚が乾燥し痒くなる皮膚炎です。
- 子供によく見られる皮膚疾患です。
- 伝染病ではありません。
- アトピー性皮膚炎を発症する子供の肌は敏感なため刺激に容易に反応します。
2. どうして私の子供がアトピーを発症したのか?
- アトピー性皮膚炎は、フィラグリンと呼ばれる表皮のたんぱく質が欠乏することで敏感肌になる遺伝病です。
- 湿疹、喘息、花粉症などの家系によく見られます。
- そのほかにも、アトピーを悪化させる外部要因は種々あります。
3. アトピーの臨床症状は?
- 多くの患者が、顔、手足、胴体に湿疹(発赤、落屑、腫れ)の症状を現します。
- 関節が特に酷く荒れる傾向にあります。
- 強い痒みを伴います。
- 湿疹が炎症すると、かさぶた(痂皮)が形成されることがあります。
4. アトピーを悪化させる要因は?未然に防ぐには?
- 悪化させる要因:
- 室温の急激な変化。激しい運動。暑く湿った空気。
- 合成繊維またはウール製の衣服。子供にはコットン生地の衣服を着させてあげてください。
- 感情的なストレス(情緒不安)
- 石鹸・泡風呂・熱湯の頻繁な使用。低刺激石鹸または乳化剤などの刺激の少ない石鹸を使用してください。また、お湯の温度はぬるま湯にしてください。
- 煙草の煙。密室内での喫煙は、アトピー患者の皮膚を刺激し炎症を引き起こします。家庭内では喫煙を保つことを強くご推奨します。
- 犬や猫のふけ。毛で覆われたペットは、アトピーの症状を悪化させます。猫や犬を家の中で飼わないようにしてください。
- 刺激性のある食物および唾液。オレンジなどの柑橘系およびトマトなどの野菜は、口の周りに湿疹を引き起こす原因となります。唇を舐めたりして唾液が皮膚に付くことで症状が悪化します。
5. 子供のアトピーはいずれ消えるの?
- 敏感な肌質は思春期に入っても変わることはありません。
- ただし、湿疹の症状は年齢と共に徐々に改善するため、大人になってもアトピーで苦しむ患者はごく僅かです。
6. アトピーはアレルギーによるもの?
- いいえ、アトピー性皮膚炎は特定のアレルギーによるものではありません。
- アトピーを持つ子供たちの皮膚はとても敏感なため、表皮に接触するあらゆる物質に過敏に反応する傾向があります。
- アトピー性皮膚炎がアレルギーによるものと唱える説もありますが、研究によって科学的に実証されたものではありません。
7. アレルギー検査は必要?
- いいえ。アトピー性皮膚炎を発症している子供たちは様々なアレルギーに陽性反応を示すので、検査を実行しても治療の改善にはなりません。
- アレルギーの血液検査も、アトピー性皮膚炎の治療の改善にはなりません。
8. アトピー患者にとって水泳は禁忌?
- アトピー患者にとって海での水泳は禁忌ではありません。
- 水泳浴場のプールに含まれる塩素は肌を炎症させる可能性があります。
9. 子供のアトピーの治療法
アトピーを完治させる薬剤というのは現在のところ存在しません。しかし、湿疹を効果的に管理する治療法はいくつかあります。
1) 皮膚軟化剤
皮膚軟化剤は、肌を保湿し柔らかくするお薬です。痒みを緩和することで引っかく行為を減らすことができる安全なお薬です。豆に塗布してください。
2) ステロイド外用薬
適切なステロイド外用薬の使用は治療の大事な一環です。症状に最も適したステロイド外用薬が医師から処方されます。
3) かゆみ止め薬(抗ヒスタミン剤)
就寝1時間前に服用することで、子供の安眠を促します。
4) 抗生物質
アトピー患者の皮膚は、特定のばい菌を引き寄せる傾向にあります。抗生物質を服用しこれらのばい菌を除去することで湿疹を改善できる場合があります。抗生物質が必要な場合は、医師から処方されます。
- 上記に加え、掻きむしりを防ぐために患者の爪は短く手入れしておく必要があります。
貨幣状湿疹(貨幣状皮膚炎)
1. 貨幣状湿疹とは?
- 貨幣状湿疹は、子供から若者に多い湿疹のひとつです。
- 腕および脚に赤い円形状の皮膚炎(紅斑)がいくつも出現します。形が硬貨に似ていることから、この名前が付けられています。
2. 臨床的特長
貨幣状湿疹には、2種類の形状があります。
a) 湿り型: 湿疹がひび割れて体液がにじみ出るタイプ。
b) 乾燥型: 湿疹が酷く乾燥し赤くなるタイプ。
どちらの形状も持続性があり、治療を怠ると数ヶ月に渡り症状が続きます。
3. なぜ貨幣状湿疹を知っておくべきなのか?
- 貨幣状湿疹は、頻繁に白癬と間違われます。
- 貨幣状湿疹は、抗真菌薬では治療できません。
4. 治療:
- 治療には、中強度のステロイドクリームを用います。
- 病班に改善が見られるまでには、長い治療時間を要します。
貨幣状湿疹(貨幣状皮膚炎)
おむつ皮膚炎
1. おむつ皮膚炎とは?
- おむつ皮膚炎は、幼少期に見られる皮膚疾患です。
- 2歳以下のお子様が発症します。
- 尿中および便中に含まれる成分が皮膚を刺激し炎症を引き起こします。
- 炎症の種類は4つに分けられます:
- 最もよく見られる炎症は、「摩擦皮膚炎」です。7~12ヶ月の幼児によく見られ、尿量がおむつの吸収容量を超えたときに炎症が起こります。尻、腰、太ももの摩擦が起きる部位が炎症の対象となります。
- 「肛門周囲皮膚炎」は、肛門部分にのみ発症する皮膚炎です。下痢をした新生児に見られるおむつ皮膚炎です。
- おむつが接触する皮膚全体に浅い潰瘍が発生するのもおむつ皮膚炎の一種です。
- 真菌(酵母菌)による二次感染もおむつによって引き起こされる炎症のひとつです。鼠径(股の付け根)および性器周辺に融合性の発赤疹が出現します。
2. おむつ皮膚炎の原因は?
- おむつ皮膚炎は、長時間に渡る皮膚と排尿・排便の接触が原因です。
- おむつの締め付けがきついほど尿中・便中のアルカリ性物質が皮膚に浸透しやすくなります。
3. 治療方法は?
症状が出たら、医師に相談し、自己治療は避けてください。
おむつ皮膚炎の基本治療は、表皮から尿・便を取り除き、おむつを常に乾燥した状態にさせ皮膚の浸軟(ふやけ)を防ぐことです。
- おむつと接触する部位に軟膏を塗布することで、症状の悪化を防ぎ皮膚を尿・便から保護することができます。
- おむつを頻繁に交換し、そのたびに軟膏を塗布することで皮膚の浸軟および再発を防ぐことができます。
- 就寝数時間後におむつを取り替えることで、就寝中に皮膚と接触する尿量・便量を減らすことができます。
- プラスチック製およびゴム製の衣服(ズボン)の着用は避けてください。
- 酵母菌感染を発症した場合、抗真菌クリームが必要です。医師が症状に合った適切な抗真菌クリームを処方します。
- 皮膚炎の症状が重い場合は、ヒドロコルチゾン1 %クリームが処方される場合があります。1日2回の塗布で不快な症状を軽減することができます。
© 2009
クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス
全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール
日本語訳:白 富美
Español Italiano Français Deutsch Tagalog Português English