高齢者の皮膚疾患 (日本語)
クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 高齢者に多い皮膚の病気とは? 皮膚表面の変化 皮 膚は常に再生しています。皮膚の下層部(基底層)で形成された細胞は、ゆっくりと時間をかけて皮膚表面にまで移動します。やっと表皮にまでたどり着いたと き、これらの細胞は既に死滅しているので、そのまま皮膚から剥がれ落ちるようになっています。しかし、老化とともに、この全体のプロセス(細胞再生)にか かる時間が長くなります。「死んだ細胞」がそのまま表皮に定着している時間も長くなるため、肌のつやが失われやすくなります。また、触った感じもザラザラ 感があります。 皮膚を支える支持組織と皮膚の弾力は、年齢とともに低下します。それに伴い、たるみやしわが現れます。 老人性紫斑病 高齢者の皮膚は薄く、外部からの刺激にも弱くなっています。 血管も刺激に対して弱くなっているので、老人性紫斑といわれるあざができやすくなります。 老人性紫斑はよく前腕に症状が現れます。理由は、皮膚の嵩(かさ)と機能を維持するヒアルロン酸が老化とともに減少するためです。 ヒアルロン酸の減少は、ビタミン不足や出血性疾患とは関係ありません。 老人性紫斑病によるあざなどの傷は、ゆっくりと時間とともに癒えます。 老人性紫斑病 老人性乾皮症・皮脂欠乏性湿疹 皮膚の脂(あぶら)が年齢とともに減少することで、皮膚が乾燥し剥がれやすくなります。 乾燥した皮膚は痒みを引き起こします。カサカサ感や硬直感といった感覚が生じます。 乾 燥した皮膚は荒れ、ひび割れや鱗屑(りんせつ)といった症状も引き起こします。これらの症状は、上背部や肢(手足)、特に下腿(すね)に出現します。乾燥 した部位に、皮脂欠乏性湿疹が現れることもあります。皮脂欠乏性湿疹は境界線が薄く、円形型の紅斑として出現します。また、(磁器に入った細かいひびに似 た)網状の赤い亀裂として出現することもあります。 皮膚感染症・寄生虫 細菌感染症:ひび割れや亀裂の間から細菌が浸入し表在性感染を引き起こすことがあります。 疥癬 疥癬は、強烈な痒みを引き起こす感染症です。ダニの寄生が原因で発症します。 集団生活をしている高齢者の間では頻繁に感染が拡大します。 ひび割れや亀裂が全身に及ぶこともあります(ノルウェー疥癬)。 疥癬のダニ 白癬感染症 高齢者の多くは、爪や皮膚(特に足)に白癬感染症を発症します。 爪が白癬感染(爪白癬)すると、爪が分厚くなり変色します。 足が白癬感染すると、皮膚が赤くなり水ぶくれができたり落屑(皮膚が剥がれ落ちる)したりします。 色素変化 そばかすのような茶色のしみが症状として現れます。 そばかすよりも大きく不規則な形をしています。一般的に、老人性色素斑と呼ばれていますが、日光性黒子と呼ばれることもあります。 日光による皮膚損傷が原因で引き起こされます。 しみが大きくなったり、厚みが増したり、かさぶたができたりするなどの症状が出た場合は、医師に相談してください。皮膚癌の場合は切除する必要があります。 老人性色素斑は、凍結療法、レーザー治療、または医薬品を用いて容易に治療することができます。 高齢者の皮膚色素細胞は機能が低下しているため、皮膚全体が土気色に見えることもあります。 水疱性疾患 高齢者は、様々な要因が原因で水疱性疾患を発症します。 なかでも、帯状疱疹は比較的高齢者に多い水疱性疾患です。 子供のときに患った水疱瘡のウイルス(帯状疱疹ウイルス)が再活性することで引き起こされます。 頭部・胴体・肢などの側面に、水泡が帯状に出現します。 痛烈な痛みを伴うことがあります。 顔面の帯状疱疹 免疫性障害が原因で水泡が出現する場合もあります。免疫性障害が原因とされる水疱性類天疱瘡は、発症すると赤みを帯びた皮膚から、または、通常の皮膚から大型の水泡が出現します。病勢を抑えるためには、強力な作用を持つ薬を使用しなければなりません。 皮膚良性腫瘍…