バラ色粃糠疹 (日本語)

バラ色粃糠疹とは?

  • バラ色粃糠疹は、皮膚のインフルエンザのような疾患です。ウイルス感染の可能性もあります。
  • 若い成人によく見られます。
  • 季節性の変動があります。

バラ色粃糠疹の症状は?

  • 医学的な診断方法:
  1. 最初に、通常の皮膚との境目がギザギザ模様に見える赤い円形の皮疹が出現します。この状態の皮疹は「ヘラルドパッチ(herald patch)」と呼ばれています。身体のどこにでも現れますが、特に胸・上腕・脚に出現するケースが多く見られます。
  2. その後、ヘラルドパッチよりも小さい皮疹が顔面を除く身体全体に現れます(大抵の場合)。背中の皮疹は、クリスマスツリーのような模様を作り上げます。
  3. 痒みを伴うこともありますが、大抵の場合症状はありません。
    Pitiriasis Rosada (de Gibert) (PR)
    バラ色粃糠疹

バラ色粃糠疹に似た症状を引き起こす疾患はありますか?

  • 非定型的バラ色粃糠疹は、第2期梅毒の症状と似る場合があるので、正確な診断には血液検査が必要です。
    第2期梅毒

バラ色粃糠疹は治療の必要性がありますか?

  • バラ色粃糠疹は、発症から3ヶ月以内で自然に治癒します。いつ頃皮疹が治まるのか、次の3つの4週間ルールで予測することができます:
  1. 最初の4週間は、皮疹が次から次へと現れます(出現期)
  2. 次の4週間は、出現する皮疹の数と、消えていく皮疹の数が大体等しくなります(安定期)
  3. 最後の4週間は、皮疹の数がどんどん減っていきます(退行期)
  • 痒みを伴う場合は、かかりつけの医師によってはステロイドクリームを処方したり、光線療法を行う場合があります。

© 2009

クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス

全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール

日本語訳:白 富美

はじめに

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高齢者の皮膚疾患 (日本語)

クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 高齢者に多い皮膚の病気とは? 皮膚表面の変化 皮 膚は常に再生しています。皮膚の下層部(基底層)で形成された細胞は、ゆっくりと時間をかけて皮膚表面にまで移動します。やっと表皮にまでたどり着いたと き、これらの細胞は既に死滅しているので、そのまま皮膚から剥がれ落ちるようになっています。しかし、老化とともに、この全体のプロセス(細胞再生)にか かる時間が長くなります。「死んだ細胞」がそのまま表皮に定着している時間も長くなるため、肌のつやが失われやすくなります。また、触った感じもザラザラ 感があります。 皮膚を支える支持組織と皮膚の弾力は、年齢とともに低下します。それに伴い、たるみやしわが現れます。 老人性紫斑病 高齢者の皮膚は薄く、外部からの刺激にも弱くなっています。 血管も刺激に対して弱くなっているので、老人性紫斑といわれるあざができやすくなります。 老人性紫斑はよく前腕に症状が現れます。理由は、皮膚の嵩(かさ)と機能を維持するヒアルロン酸が老化とともに減少するためです。 ヒアルロン酸の減少は、ビタミン不足や出血性疾患とは関係ありません。 老人性紫斑病によるあざなどの傷は、ゆっくりと時間とともに癒えます。 老人性紫斑病 老人性乾皮症・皮脂欠乏性湿疹 皮膚の脂(あぶら)が年齢とともに減少することで、皮膚が乾燥し剥がれやすくなります。 乾燥した皮膚は痒みを引き起こします。カサカサ感や硬直感といった感覚が生じます。 乾 燥した皮膚は荒れ、ひび割れや鱗屑(りんせつ)といった症状も引き起こします。これらの症状は、上背部や肢(手足)、特に下腿(すね)に出現します。乾燥 した部位に、皮脂欠乏性湿疹が現れることもあります。皮脂欠乏性湿疹は境界線が薄く、円形型の紅斑として出現します。また、(磁器に入った細かいひびに似 た)網状の赤い亀裂として出現することもあります。 皮膚感染症・寄生虫 細菌感染症:ひび割れや亀裂の間から細菌が浸入し表在性感染を引き起こすことがあります。 疥癬 疥癬は、強烈な痒みを引き起こす感染症です。ダニの寄生が原因で発症します。 集団生活をしている高齢者の間では頻繁に感染が拡大します。 ひび割れや亀裂が全身に及ぶこともあります(ノルウェー疥癬)。 疥癬のダニ 白癬感染症 高齢者の多くは、爪や皮膚(特に足)に白癬感染症を発症します。 爪が白癬感染(爪白癬)すると、爪が分厚くなり変色します。 足が白癬感染すると、皮膚が赤くなり水ぶくれができたり落屑(皮膚が剥がれ落ちる)したりします。 色素変化 そばかすのような茶色のしみが症状として現れます。 そばかすよりも大きく不規則な形をしています。一般的に、老人性色素斑と呼ばれていますが、日光性黒子と呼ばれることもあります。 日光による皮膚損傷が原因で引き起こされます。 しみが大きくなったり、厚みが増したり、かさぶたができたりするなどの症状が出た場合は、医師に相談してください。皮膚癌の場合は切除する必要があります。 老人性色素斑は、凍結療法、レーザー治療、または医薬品を用いて容易に治療することができます。 高齢者の皮膚色素細胞は機能が低下しているため、皮膚全体が土気色に見えることもあります。 水疱性疾患 高齢者は、様々な要因が原因で水疱性疾患を発症します。 なかでも、帯状疱疹は比較的高齢者に多い水疱性疾患です。 子供のときに患った水疱瘡のウイルス(帯状疱疹ウイルス)が再活性することで引き起こされます。 頭部・胴体・肢などの側面に、水泡が帯状に出現します。 痛烈な痛みを伴うことがあります。 顔面の帯状疱疹 免疫性障害が原因で水泡が出現する場合もあります。免疫性障害が原因とされる水疱性類天疱瘡は、発症すると赤みを帯びた皮膚から、または、通常の皮膚から大型の水泡が出現します。病勢を抑えるためには、強力な作用を持つ薬を使用しなければなりません。 皮膚良性腫瘍…

白斑 (日本語)

白斑 白斑とは何か。 白斑は、皮膚に白い斑点や斑模様が生じる皮膚疾患です。 原因は、肌の色を作り上げるメラニン色素細胞の欠失によるものです。色素細胞(メラノサイト)が破壊されメラニンが生成できなくなったときに起こります。 白斑は、伝染病ではありません。 以下の部位によく発症します: 骨ばった部位―手の甲、手の指、肘、膝。 身体開口部―目・口・鼻の周り。 身体の付け根部分―脇、股間。 その他―脚、手首、乳首、性器。 白斑は、切り傷または火傷などの外傷部位にも発生する場合があります。 白斑が生じた部位に生える毛も白くなる場合があります。 白斑の原因は? 白斑の原因はわかっていません。 しかし、白斑を発生する患者の中には、以下の疾患に罹患しているケースが多く見られます: 糖尿病 甲状腺疾患 その他自己免疫疾患。 白斑(肘) 白斑は治療できますか? はい、できます。幾つかの治療法がありますが、その効果は罹患部位および患者によって異なります。 化学物質によっては、皮膚の色素細胞を破壊して白斑のような症状を引き起こすものもあります。そのような化学物質への接触は避けることが重要です。美白用クリームの中に、そのような化学物質が含まれている場合があります。 白斑の治療方法は?: 副腎皮質ステロイド・クリーム 患者によっては、強めの副腎皮質ステロイド・クリームが効果的な場合があります。 副作用を防ぐために、定期的に医師に診てもらう必要があります。 ソラレン光化学療法(PUVA療法) PUVA療法は、光感作薬ソラレン(Psoralen)と紫外線A波(UVA)を一緒に使う光化学療法です。頭文字をとりPUVA療法と呼ばれています。 ソラレンは、太陽光の一部であるUVAに対して、皮膚を一時的に敏感にさせます。 ソラレンは、ローションまたは錠剤で使用することが可能です。 ローション使用後にUVA暴露を併用する治療法は、外用PUVAと呼ばれています。 錠剤を使用する場合は、内服PUVAと呼ばれます。 一般的には、部分的白斑の治療には、外用PUVAが用いられます。 PUVA療法は、効果を最大に引き出すために、1年もしくはそれ以上の治療期間を必要とします。 徹底した医師の管理が必要です。 太陽光に含まれるUVAの線量は毎日変動するため、ソラレン・ローション使用後に太陽光暴露を行う方法は、信頼性に欠けるだけでなく、危険が伴います。医師の指導の下、UVAの人工光源を使用する方法が、より好まれます。 カモフラージュ化粧品 化粧品によっては、とてもよく肌の色になじむものもあり、特に、顔や手の甲の白斑を隠すのに最適な製品もあります。 太陽光を必要としない肌色着色作用のある化学物質(ジヒドロキシアセトン)も白斑を隠すのに便利です。 日焼け止め 白斑部位は、肌を守る色素が欠乏しているため、日焼けに対して非常に敏感です。 太陽光に暴露される白斑部位に、SPF値が高くスペクトル(周波数)が広い日焼け止めを使用することをお勧めします。 © 2009 クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール…

白斑 (日本語)

白斑 白斑とは何か。 白斑は、皮膚に白い斑点や斑模様が生じる皮膚疾患です。 原因は、肌の色を作り上げるメラニン色素細胞の欠失によるものです。色素細胞(メラノサイト)が破壊されメラニンが生成できなくなったときに起こります。 白斑は、伝染病ではありません。 以下の部位によく発症します: 骨ばった部位―手の甲、手の指、肘、膝。 身体開口部―目・口・鼻の周り。 身体の付け根部分―脇、股間。 その他―脚、手首、乳首、性器。 白斑は、切り傷または火傷などの外傷部位にも発生する場合があります。 白斑が生じた部位に生える毛も白くなる場合があります。 白斑の原因は? 白斑の原因はわかっていません。 しかし、白斑を発生する患者の中には、以下の疾患に罹患しているケースが多く見られます: 糖尿病 甲状腺疾患 その他自己免疫疾患。 白斑(肘) 白斑は治療できますか? はい、できます。幾つかの治療法がありますが、その効果は罹患部位および患者によって異なります。 化学物質によっては、皮膚の色素細胞を破壊して白斑のような症状を引き起こすものもあります。そのような化学物質への接触は避けることが重要です。美白用クリームの中に、そのような化学物質が含まれている場合があります。 白斑の治療方法は?: 副腎皮質ステロイド・クリーム 患者によっては、強めの副腎皮質ステロイド・クリームが効果的な場合があります。 副作用を防ぐために、定期的に医師に診てもらう必要があります。 ソラレン光化学療法(PUVA療法) PUVA療法は、光感作薬ソラレン(Psoralen)と紫外線A波(UVA)を一緒に使う光化学療法です。頭文字をとりPUVA療法と呼ばれています。 ソラレンは、太陽光の一部であるUVAに対して、皮膚を一時的に敏感にさせます。 ソラレンは、ローションまたは錠剤で使用することが可能です。 ローション使用後にUVA暴露を併用する治療法は、外用PUVAと呼ばれています。 錠剤を使用する場合は、内服PUVAと呼ばれます。 一般的には、部分的白斑の治療には、外用PUVAが用いられます。 PUVA療法は、効果を最大に引き出すために、1年もしくはそれ以上の治療期間を必要とします。 徹底した医師の管理が必要です。 太陽光に含まれるUVAの線量は毎日変動するため、ソラレン・ローション使用後に太陽光暴露を行う方法は、信頼性に欠けるだけでなく、危険が伴います。医師の指導の下、UVAの人工光源を使用する方法が、より好まれます。 カモフラージュ化粧品 化粧品によっては、とてもよく肌の色になじむものもあり、特に、顔や手の甲の白斑を隠すのに最適な製品もあります。 太陽光を必要としない肌色着色作用のある化学物質(ジヒドロキシアセトン)も白斑を隠すのに便利です。 日焼け止め 白斑部位は、肌を守る色素が欠乏しているため、日焼けに対して非常に敏感です。 太陽光に暴露される白斑部位に、SPF値が高くスペクトル(周波数)が広い日焼け止めを使用することをお勧めします。 © 2009 クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール…

糖尿病と皮膚病 (日本語)

クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 糖尿病とは何か。 糖尿病は、西洋諸国でよく見られる病気です。 糖尿病患者は、血糖値が高く、適切な管理を怠ると目・腎臓・神経系・血管などの様々な器官に長期合併症を引き起こすことがあります。 皮膚病は、糖尿病患者によく見られます。糖尿病患者の特徴として発生する皮膚病もあります。 糖尿病に伴う一般的な皮膚疾患は? 糖尿病性皮膚障害 これは、糖尿病患者によく見られる最も一般的な皮膚疾患です。 すねの部位に見られることが多く、茶色の瘢痕が出現します。茶色の瘢痕が形成される前兆として、赤い斑点または水疱が現れる場合があります。 原因は、皮膚の微小血管の異常な変化によるものです。 この病気には、標準的な治療法がありません。自然治癒が起こり、陥凹性瘢痕へと変化する傾向があります。 壊疽 糖尿病による脚の大血管閉塞(血行不足)が原因で、長時間歩くときに痛みを伴う場合があります。深刻な血管閉塞の場合、皮膚組織が壊死し、足指に壊疽性変化が生じることがあります。 手術で壊死組織を除去する必要があります。重症の場合は、脚または足の切断が必要です。 糖尿病性神経障害 糖尿病による血管閉塞が原因で、神経が傷つけられる場合があります。 脚に灼熱感、チクチク感、しびれなどを感じることがあります。 患者によっては、無感覚または感覚を感じにくくなる場合があり、脚に注意を向けていないと、外傷がもとで褥瘡または皮膚潰瘍などを発症する可能性があります。 皮膚感染症 糖尿病患者は、皮膚感染症を発症しやすい傾向があります。麦粒腫、腫れ物、真菌感染症は、それらの例です。 中には、深刻な感染症を引き起こすケースもあり、一刻も早い治療が必要な場合があります。例)よう(癰)-毛包の細菌性感染症(膿瘍)、蜂巣炎-細菌感染症。 蜂巣炎は、発症すると脚に熱を持った腫れ物が出現することが多く、赤みがかったその腫れ物は、押すと柔らかみがあります。 壊疽性筋膜炎は、生死に関わる深刻な皮膚感染症であり、感染が筋肉まで奥深く達する場合があります。皮膚に、痛みを伴う炎症性および出血性の腫れ物または水疱が生じ、緊急治療・手術が必要です。 下肢蜂巣炎 リポイド類壊死症 これは、皮膚の微小血管の異変が原因で生じる、まれな糖尿病合併症です。 すねに皮膚障害が起こることが多く、罹患した部位は赤茶色の枠の中に黄色がかった斑点が出現します。 時折、糖尿病と診断される前に、前兆としてこの皮膚病に罹患するケースがあるので、リポイド類壊死症を発症した場合は糖尿病の検査をする必要があります。 潰瘍を伴ったリポイド類壊死症 黒色表皮症 これは、糖尿病によって引き起こされる皮膚疾患です。 遺伝性疾患や内臓癌などの内科疾患の兆候ともされています。 肥満の方によく見られる皮膚病です。 脇・上背・首・股間などの部位に、分厚くて滑らかな黒褐色の皺襞(ひだ)が現れるのが特徴です。 黒色表皮症 黄色腫と黄色板腫 糖尿病患者は、血清脂質値(コレステロール、トリグリセリド)が高いことが多く、蓄積した脂肪分が皮膚に浸潤して黄色腫または黄色板腫を引き起こすことがあります。 黄色腫は、肘・膝・かかとなどの骨ばった部位に無症状性の黄色く固い結節が出現します。時折、帽針頭大の黄色い丘疹が、臀部(尻)に群がって生じることがあります(発疹性黄色腫)。 黄色板腫は、高血中コレステロールの兆候として現れ、まぶたに黄色い斑点が出現します。 治療は、飽和脂肪の摂取を抑えた食事制限で血清脂質値を標準に戻し、また、必要であれば脂質低下を促す内服薬を投与します。 環状肉芽腫 これは、小児および若年成人によく見られる皮膚疾患です。 多くの場合、糖尿病と関連しています。 初期症状の特徴として赤い斑点が現れ、進行するにつれて円形状に拡大していきます。手(特に指)や肘に発症することが多いです。 環状肉芽腫が広範囲に出現した場合、糖尿病が絡んでいるケースがあります。糖尿病の兆候および症状が出る前に、環状肉芽腫を発症することもあります。従って、広範囲に環状肉芽腫が出現した場合は、糖尿病の検査を受ける必要があります。 環状肉芽腫 糖尿病に関連した皮膚病を発症した場合の処置方法は? 細菌性皮膚感染症や壊疽などの深刻な合併症の場合は、直ちに治療を受けてください。 早期段階で医師に相談してください。入院する必要がある場合もあります。 治療を怠ると、これらの合併症は、命に関わる危険性があります。感染潰瘍は、抗生物質で治療する必要があります。…

頭皮の感染症 (日本語)

真菌感染症(白癬、しらくも)

  • 頭部白癬は、頭皮の真菌感染症である。
  • 頭部白癬は、成人よりも小児に発生することの方が多い。
  • 頭 皮の真菌感染症は、感染の度合いや感染源によって、症状が異なる。軽症の場合、痒みを伴ったうろこ状の皮疹が症状として現れる。毛 包と毛髪も感染する。感染した毛髪は不規則に切れて、禿げた部分が露出する。その部分の皮膚は、炎症で赤みが生じることもある。重症の場合(感染したペッ トから人への感染が多い)、罹患した部位の赤みは増し、皮膚が柔らかくなり、じくじくするといった症状が現れる。炎症を起こした皮膚から膿が染み出し、禿 瘡(とくそう)と呼ばれる腫瘤または腫物が形成されることもある。感染した毛髪が抜け、かさぶたが生じることもある。
  • 頭皮の真菌感染症は、経口抗真菌剤の服用と適切な毛髪ケアを行うことによって、治療することができる。
  1. 再発防止のために、感染源(例、ペット)も同時に治療をしていく必要がある。
  2. 永久的な瘢痕または脱毛を防ぐには、早期発見と早期治療が大切である。
  • 頭皮の真菌感染症にかかった疑いがある場合には、直ちに医師に相談すること。

毛包の細菌感染症(毛包炎、腫物)

  • 毛包症は、毛包の細菌感染症である。
  • 毛包症は、にきびのような突起物が頭皮に現れる。頭皮の様々な場所に、痛みを伴う赤くて柔らかい腫物が出現する。膿疱が見られることもある。
  • 毛包症に感染しやすい人と、そうでない人に分かれる。
  • 感染が頻繁に起こる場合は、免疫系に異常がないか、検査で確かめる必要がある。
  • 毛包症は、経口抗生物質で治療することができる。
  1. 清潔さを維持し、薬用(アンティセプティック)シャンプーで定期的に頭皮と毛髪を洗うことによって、再発を防ぐことができる。
  2. 感染を抑えるために、長期間経口抗生物質を服用するケースもある。

帯状疱疹(帯状ヘルペス)

  • 帯状疱疹は、ウイルスによって引き起こされる感染症である。水疱瘡(みずぼうそう)を引き起こすウイルスと同じである。水疱瘡のウイルスが再び活性化されることで、帯状疱疹が生じる。過去に水疱瘡を発症したことがある場合にのみ、帯状疱疹が出現する。
  • 免疫が弱っている人に起きやすい。例)ウイルス感染症の後や癌患者など。
  • 神経根に沿って、疱疹が線状に出現する。疱疹が現れる前に、痛みや痒みが度々発生する。その後ひどい痛みを伴う赤い疱疹が現れ、やがてただれ、かさぶたとなる。出現する部位の例)額、首、前頭部の頭皮、後頭部の頭皮。
  • 人により差はあるが、通常約2週間で症状は消える。
  • 皮膚損傷が消えた後も、何ヶ月にも渡ってひどい痛みが続くケースもある。高齢者は、帯状疱疹後神経痛を発症するリスクが高い。
  • 帯状疱疹にかかったら、医師に相談すること。免疫が低下している原因を特定するために検査を実施する場合もある。
  • 効果的な治療は、早い段階(症状が現れてから48時間以内)で適切な抗ウイルス薬を投与することである。経口抗ウイルス薬は、帯状疱疹の治療期間を早め、症状も軽減することができる。

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クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス

全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール

日本語訳:白 富美

はじめに

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基底細胞癌(BCC): 写真 (日本語)

Basal Cell Carcinoma on the cheek

頬部に生じた基底細胞癌(BCC)

Basal Cell Carcinoma on the forehead

前額部に生じた基底細胞癌(BCC)

Pigmented Basal Cell Carcinoma in an Asian Patient

色素性基底細胞癌(BCC)を発症したアジア人患者

Basal Cell Carcinoma presenting as a non healing wound

いつまでも治らない基底細胞癌(BCC)

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全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール

日本語訳:白 富美

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皮膚癌 (日本語)

皮膚癌とは何か。 皮膚癌には、多くの種類があり、その中でも下記に挙げる3つは最も罹患率が多い。 1. 有棘細胞癌(SCC) 固く不規則な腫瘍が、大抵の場合は日光露出部位に形成されることが多い。 腫瘍は成長が早く、短期間で大きなしこりとなり、潰瘍に発展することもある。 治療をしないでいると、癌が周囲のリンパ腺に転移することもある。 有棘細胞癌は、年配者に見られるケースが多い。慢性的な日光暴露は、この種の皮膚癌を発症させる大きな要因である。 有棘細胞癌 ボーエン病は、皮膚浅部(上皮内)のみに生じる表皮内有棘細胞癌である。(陰部に発症したものは、ケーラー紅色肥厚症または外陰上皮内腫瘍(VIN3)と呼ぶ) ボーエン病 ボーエン病の組織学:表皮の細胞配列が乱れ(細胞極性喪失)、異常角化細胞が出現する。表皮を超えての進行はない。 2.基底細胞癌(BCC) 基底細胞癌は、進行が遅く無痛である。 半透明または光沢を伴った盛り上がりが生じ、無痛潰瘍が度々出現する。潰瘍は色素沈着しているケースが多い。 一般的に顔面に発症することが多い。 基底細胞癌 写真を見る 3.悪性黒色腫(メラノーマ) 色素細胞から発生する癌である。 極めて悪性の皮膚癌である。 皮膚に暗褐色または黒色の増殖性変化が起こる。通常のほくろのように見えることもある。下記に、ほくろと異なる点を挙げる: 成長速度が速い。 表面に、赤・黒・青などの様々な色がある。 不規則な形をしている。 形は割と大きい。 盛り上がる傾向がある。 アジア人が指、つま先、顔面に悪性黒色腫を発症するケースは少ない。 表在拡大型黒色腫 皮膚癌の治療 どの皮膚癌も、直ちに取り除く必要がある。 癌性腫瘍の場合は、癌細胞を死滅させるか外科的に切除する必要がある。 確実な診断を行うために、腫瘍組織の一部を採取(皮膚生検)し、癌性かどうか調べる場合もある。 © 2009 クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 全国皮膚センター (National Skin Centre). シンガポール 日本語訳:白 富美 はじめに English Español Français Italiano Português Deutsch…

皮膚真菌症 (日本語)

癜風でんぷう)とは何か。

  • 癜風は、酵母菌が皮膚を感染することによって発症する皮膚真菌症である。表皮に色の薄いうろこ状の皮疹が生じる。これらの皮疹は、顔、首、肩、腕、胴体、あるいは脚に出現する。医学上の呼称は、癜風である。
  • 生まれつき皮膚の色が濃い場合は、薄い色の皮疹が生じる。
  • 逆に、生まれつき色が白い場合は、濃い色の皮疹が生じる。薄い色の皮疹は、酵母菌のアゼライン酸の存在によって説明がつく。しかし、濃い色の皮疹に関しては、理由が知られていない。
  • 発症の原因となる酵母菌は、ピチロスポルム・オバーレ(Pityrosporum Ovale)と呼ばれる癜風菌である。
  • 治療は簡単だが、再発する傾向がある。

Pityriasis Versicolor (Tinea Versicolor)

癜風(でん風)

白癬」とは何か。

  • 白癬にかかると、うろこ状の赤い輪形の皮疹が出現し、輪の周辺は盛り上がる傾向にある。胴体に生じたものを体部白癬(たむし)といい、股に生じたものを股部白癬(いんきんたむし)という。真菌感染によって発症する。頭皮や爪などの部位にも発症する場合がある。

「水虫(足白癬)」とは何か。

  • 水虫にかかると、足指の間の皮膚がうろこ状になり剥離しやすくなる。痒みが生じることもある。感染の原因となる真菌は、足の裏や爪にも広がる場合がある。医学上の呼称は、足白癬である。

カンジダ症/モリニア症とは何か。

  • 口唇や性器周辺に頻繁に発症し、特に糖尿病患者や、経口ステロイド薬服用者、長期間抗生剤を投与されている患者に多くみられる。赤い発疹が出現し、痒みを伴う。女性の場合は、痒みを伴った腟分泌物が出ることもある。

表層真菌感染症の予防法。

  • 皮膚が温かく湿っていると、真菌は繁殖しやすい。足指の間、脚の付け根、脇の下は真菌感染症を防ぐために乾燥させておかなければならない。
  • 床が塗れている場合は、素足で歩かない。例)浴室、洗面所、水泳プール。真菌感染を防ぐためにスリッパを履く。
  • 生理用ナプキン、タオル、くし、ヘアブラシは、真菌感染の原因になることがあるので、貸し借りをしない。真菌は容易に伝染するので、必ず個人のアイテムを使用すること。罹患した部位に触れてしまった場合は、滅菌してから使用すること。
  • ナイロン素材の靴下や足全体を覆う靴は、汗の蒸発を妨げるので、発汗が多い場合はコットン素材の靴下か、つま先の開いたサンダルを着用すること。
  • バランスの取れた食事、運動、休息の時間をもつなどして、健康的な生活様式を守り、身体の抵抗力を養うこと。弱った身体は真菌感染を引き起こしやすい。

Infection du corps par un champignon

身体の皮膚真菌感染症

表層真菌感染症の治療法。

  • 医師に処方された抗真菌クリームを1日2、3回患部に塗り、これを3週間続ける。抗真菌クリームには、ナイスタチン、トルナフテート、イミダゾール、ナフチフィンなどがある。
  • 病変が消えても、すぐに治療を終了しないこと。感染による病変が消えた後も、最低7日間は治療を継続すること。白っぽい皮疹が生じていた場合は、治療後も色が残ることがある。しかし、皮膚が正常に快復していくにつれ、元の色に戻る。
  • 真菌感染が広範囲に及んだ場合は、経口抗真菌薬が処方されることもある。
  • 癜風(でんぷう)を予防するために、抗真菌シャンプー(例、硫化セレンシャンプー)を毎月1回使用してもよい。15~30分ほど皮膚に付けた後、リンスして流す。感染した場合は、7日間使用を続けることで快復する。

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頭皮の炎症性皮膚疾患 (日本語)

クリストフスー (Christophe HSU) – 皮膚科医. ジュネーブ、スイス 脂漏性皮膚炎(ふけ) 脂漏性皮膚炎の原因は未だ解明されておらず、分類すると2種類に分けることができる。 (i) 乳児脂漏性皮膚炎-新生児や乳児によく見られる (ii) 成人型脂漏性皮膚炎-中年成人によく見られる 脂漏性皮膚炎は、頭皮に黄色調の脂っぽい鱗屑(ふけ)が生じる。その真下の皮膚は赤みを帯びている。軽度の状態では、斑模様のように部分的に症状が出現するが、重症になると赤斑や鱗屑が広範囲に広がることもある。 症状は、眉毛部、頬部、前胸部、背部、股間部に出現することもある。 掻痒(かゆみ)を伴うこともある。 酵母菌感染症と脂漏性皮膚炎の関連性についての報告は出ているが、脂漏性皮膚炎は、真菌感染症ではない。 HIV感染症患者の中には、重度の脂漏性皮膚炎を発症するケースも多い。 治療には、弱めの殺菌消毒薬か抗真菌シャンプー、また、弱めの局所用ステロイド(ローションまたはジェル)を用いる。再発するケースが多い。 頭皮の乾癬 乾癬は、皮膚細胞のターンオーバー(表皮の成長周期)が異常に速まる炎症性皮膚疾患である。 皮膚や頭皮に大きめの鱗屑(うろこ状のかさつき)を伴った皮疹が生じる。症状は、頭皮や髪の生え際部分に斑模様のように出現し、おでこやこめかみ部分にも広がる傾向がある。皮疹は赤く(ピンク色に近い)、銀白系の鱗屑で覆われている。 痒みを伴うことは少ない。 爪が変形することもある。 頭皮の乾癬の治療には、コールタールシャンプーとコールタール軟膏、または局所用ステロイドスプレーか局所用ステロイドジェルを用いる。 接触皮膚炎と皮膚アレルギー 接触皮膚炎は、外部からの刺激によって引き起こされる炎症である。 頭皮の刺激性接触皮膚炎は、薬用シャンプーの使い過ぎや、化学物質(例、脱色剤、パーマ液)、頭皮への過度な熱的刺激などによって発症する。 髪 や頭皮に使用される様々な製品が、皮膚アレルギーの原因になっている。中でも、毛染剤は、頭皮のアレルギー性接触皮膚炎を引き起こす一番の要因である。そ のほか、ヘアローションに含まれる香料、パーマ液に使われる化学物質、シャンプーや頭皮・髪用ローションに含まれる薬剤や防腐剤などによっても誘発され る。 頭皮、髪の生え際、耳などの部分に掻痒を伴った赤斑が生じる。急性期では、水疱や浮腫が出現することもある。また、眼瞼腫脹が起こることもある。 治療に際しては、原因物質特定のために医師に相談すること。再発を防ぐための予防策に取り組むことが重要。確実な診断をするためにパッチテストを行う可能性があり。 扁平苔癬 扁平苔癬は、頭皮に斑模様のように部分的に脱毛が生じる炎症性皮膚疾患である。 扁平苔癬の原因は解明されていない。 頭皮に赤紫色の皮疹が斑模様に出現した後、それらが拡大し脱毛が生じる。皮疹が生じた部分は瘢痕が残り毛が生えない。皮疹は多くの場合痒みを伴い、口腔粘膜や爪などにも影響が見られることもある。頭皮以外の部分では、痒みを伴った青紫色の皮疹が部分的に出現する。 扁平苔癬のほとんどが、数年以内に自然治癒する。 頭皮の扁平苔癬は、瘢痕や永久脱毛を防ぐためにも早期治療が必要である。治療には、ステロイド外用薬を塗るか、ステロイドを病変内注射にて投与する。 円板状エリテマトーデス(円板状紅斑性狼瘡、DLE) 円板状エリテマトーデスは、主に皮膚を侵す自己免疫疾患である。 頭皮に斑模様のように赤斑が出現し脱毛が生じる。皮膚が薄くなり、毛細血管が浮き出て見えることもある。瘢痕性脱毛が生じ、永久に毛が生えないこともしばしばある。痒みや痛みはない。頭皮以外の部分(例、顔、耳介)もよく侵されることがあり、日光暴露によって増悪する。 確実な診断をするためには、皮膚生検などの臨床検査が必要である。 進行性の瘢痕性脱毛を防ぐためにも早期治療が不可欠である。有効な治療法はあるが、瘢痕が生じてしまった部分は治癒しにくい。 内臓(例、肺、腎臓、心臓)に病変が生じることも時折あり、その場合は全身性エリテマトーデス(SLE)と診断される。 従って、DLE患者は定期的に検査を受ける必要がある。 (慢性)円板状エリテマトーデス Discoid (Chronic) Lupus Erythematosus 円形脱毛症 円形脱毛症は、皮膚の自己免疫疾患である。 一つないし複数の脱毛斑が主に頭皮に出現する。皮膚が赤くなったり痒みを帯びるといった前兆はない。突然脱毛が生じ、数日のうちに脱毛斑が出現する。表皮下層は至って正常である。 円形脱毛症の原因は解明されていない。 患者の多くは、数ヶ月以内で自然消退する。…